アトピー性皮膚炎の治療の3原則については前回お話しましたね。今回は、これらの対策をしても悪化してしまうアトピー性皮膚炎に対して使用する治療薬についてお話をします。
まず、初めにみなさんいご理解いただきたいおは皮膚科医が目指すアトピー性皮膚炎の治療のゴールについてです。
アトピー性皮膚炎の治療のゴールは完治や根治ではありません。
アトピー性皮膚炎の治療のゴールは『症状がない、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬による治療をあまり必要としない状態(寛解)』であり、その状態を維持することです。
患者さんご自身が治療のゴールを知っていると、前回お話しした3原則がいかに大切なことかご理解いただけると思います。
アトピー性皮膚炎は治すものではありません、コントロールするものです。
皮膚科医はアトピー性皮膚炎の患者さんを薬漬けにしたいわけではありません。アトピー性皮膚炎を、薬を使わずともコントロールできるようになってほしいのです。
アトピー性皮膚炎を完全にコントロールするためにはまず寛解を目指す必要があります。寛解を目指すために大切な役割を担うのが治療薬です。
アトピー性皮膚炎の治療薬には、①外用剤、②内服薬、③紫外線療法、④抗体製剤・JAK阻害剤があります。
①外用剤
アトピー性皮膚炎の外用剤にはいくつか種類がありますが、今も昔も絶対的な王者として君臨するのがステロイド外用剤です。ステロイド外用剤は皮膚のかゆみや赤みをとる副腎皮質ホルモンの塗り薬です。5段階の強さがあり、症状や部位、年齢に応じて皮膚からの吸収力を考慮し強さの選択をします。ステロイド外用剤については、副作用の観点から怖いもの、避けるべきものと噂されますが、皮膚科医の指導のもと正しく使用すればこれほど信頼できる薬はありません。ネットや患者さんから聞く噂の多くは、ステロイド外用剤の副作用ではなくアトピー性皮膚炎の合併症であることがほとんどです。ステロイド外用剤は依存するものでも、忌み嫌うものでもありません、共存するものです。皮膚科医を信じて、怖がらずにステロイド外用剤で正しく治療しましょう。ステロイド外用剤の徹底をすれば、アトピー性皮膚炎の多くは2週間程度で寛解します(寛解は楽勝、寛解維持が難しい)。
しかしながら、長年ステロイド外用剤で治療を行っていると、ステロイド外用剤の副作用に悩まされる患者さんも一定数おります。ステロイド外用剤を長期にわたり使用することは望ましくなく、生涯使用量は少なければ少ないに越したことはありません。
そこで近年登場しているのがステロイド外用剤ではないアトピー性皮膚炎の治療薬です。プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏、ブイタマークリームなどがこれにあたります。これらにも副作用はありますが、長期使用をしてもステロイドほど副作用の危険は少ないため、症状に応じて使用します。アトピー性皮膚炎の寛解維持にとても重要な役割を担います。
②内服薬
主な内服薬は抗ヒスタミン剤です。かゆみを感じ、掻破行動が生じることでアトピー性皮膚炎の症状が悪化することは説明しましたね。つまり、いくら外用剤で治療をしていても、痒みが強く掻破していれば効果は出ません。そこで、抗ヒスタミン剤を内服することでかゆみをおさえ、掻破行動を減らすことが外用剤の効果を最大限に引き出します。抗ヒスタミン剤はアトピー性皮膚炎の治療の補助的な役割を担う大切な薬です。
抗ヒスタミン剤以外にも、ステロイド内服薬や免疫抑制剤など治療を目的とした内服薬もありますが、これらは副作用が強いため積極的に使用したがらない、使用しても短期間にとどめる皮膚科医が多いです。
③紫外線療法
アトピー性皮膚炎の治療には紫外線療法が効果的です。PUVA、ナローバンドUVB、エキシマライトがこれにあたります。紫外線療法は安全性が高く、小児や妊婦にも使用できる有効な治療法です。外用剤だけでは効果が出にくい患者さんにはぜひ一度試していただきたいです。治療機器を所持していない診療所が多いことや、週1~2回の通院が必要なことがデメリットです。(当院ではエキシマライトによる光線療法を行っています)
④抗体製剤・JAK阻害剤
重症なアトピー性皮膚炎の患者さんにとって、まさに救世主と呼ぶべき治療薬だと思います。抗体製剤にはデュピクセント、アドトラーザ、イブグリース、ミチーガなどがあり、JAK阻害剤にはリンヴォック、オルミエントなどがあります。外用剤、内服薬、紫外線療法を長期にわたり徹底していてもアトピー性皮膚炎を寛解できない患者さんが適応になります。効果は高いですが、治療費や副作用にリスクも高く、すべての方がいつどこの医療機関でも導入できる治療ではありません。
これらの治療は、薬剤についての使用法と安全性を熟知した皮膚科専門医であると皮膚科学会から承認された医療機関でしか導入・治療ができない特別な治療法です。当院は、皮膚科学会から『生物学的製剤使用承認施設』として認定されておりますので、安全に導入・治療が行えます。
アトピー性皮膚炎の治療は近年めまぐるしく進歩し、軟膏を塗るだけがアトピー性皮膚炎の治療ではなくなってきています。新たな治療薬は続々と登場してきておりますが、アトピー性皮膚炎の治療の基本はあくまでも3原則、スキンケア、清潔、アレルゲンの除去です。
何度も言います、皮膚科医はアトピー性皮膚炎の患者さんを薬漬けにしたいわけではありません。
アトピー性皮膚炎の治療のゴールをしっかりと理解し、ご自身の行動を変え、上手にコントロールできるようになりましょう。


